本の記録
読書感想文。
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終わらざる夏(上)(中)(下)
09月 15日 * 04:17 * 浅田 次郎 *
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浅田次郎の戦争小説。

浅田次郎の戦争小説といえば日輪の遺産があります。
あの小説も戦争を王道から描いた小説ではありません。「終わらざる夏」も王道ではありません。

一億玉砕、本土決戦、そんな言葉が合言葉のように飛び交う昭和20年の日本。
日本が負けるだなんて口が裂けても言えないような世の中でのそれぞれの立場の人々のお話。

太平洋戦争の終盤からポツダム宣言を受け入れるまで、
その後の千島列島で起きた占守島の戦闘までが描かれています。

オチがつくわけでも、きちんと終わるわけでもない小説です。
そしてすごく長い小説です。
最後は本当に、やるせない気持ちになります。
でも、フィクションだけれど本当にこういう人たちが実際にいたんだ。と浅田次郎はインタビューで語っていました。
戦争で亡くなった兵隊さんが何万人、民間人が何万人と数であらわすことは、すごくすごく高いところからの視点です。
視点をぐっと下げて人の顔の見えるところまで落としていけば、1人1人はそれぞれ、誰かにとってのかけがえのない人で、大切な人で、いなくては困る人たち。
一億玉砕だ!と言いつつも、彼らは自分の大切な人には生きていて欲しいと願うし、自分の大切な人のために死にたくないと思う。当然自分自身だって死にたくなんてない。
それは生き物として当然のことで、そんな当然のことすら口に出来ない、願えないなんて想像したくもない世界であります。

浅田次郎の小説なので、ものすごく浅田次郎っぽい描き方をしております。
あの感じが苦手でなければ、一読する意味のある小説ではないかな、と思いました。
それは、戦争ってどういうものか、戦争が起きている国の中ではどういう事が起こるのか、自分たちはどういう気持ちになるのか。そういう事を想像しやすくなるということです。

やっぱり戦争は嫌だな。と心底感じたりしたのでした。

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松尾スズキのやさしい野蛮人入門1・2・3
09月 14日 * 12:49 * 松尾 スズキ *
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(転載)

私は松尾さんのエッセイが大好きです。
こんなにおもしろいエッセイを書く人は他にあまり知りません。

ただただぼやいてるだけのWeb日記を本にした「ギリギリデイズ 」という本があります。
本当に日記なんだけれど、それがすごく面白い。
こんなに素(に近い)ボヤキが面白い人、他に知らない。
なんで私が松尾さんが好きなのか、すごく納得した本でありまして。

この人、自分の主観を俯瞰で眺めてる人な気がします。むしろ自分自身に寄れない感じがする。
エッセイのなかで主張している偽善の勧めはものすごくわかる。
善意の人は時に独善に陥るというのもすごくよく分かる。
人が行動を起こすときは、100%自分のためであるので、あなたのために云々ってのはすごくうそ臭い。

人はしたいことしかしないのです。
究極に思える選択をしなければいけない時だって、
限られた選択肢のなかからどれが自分にとっての一番なのかを選んでいるのだ。
自分が損をして相手が得をするような行動を取ることもあろう。
けれどそれだって、自分がそうしたいからするのであって、そう考えたら自分のためなのだ。

私がいい気持ちになりたいからあなたに善いことをしますよ。
と宣言する事で平和になるってのはものすごく感じるところ。
人はただしてもらってばかりだとやっぱり落ち着かなくなるもので。
お互いに利益があってイーブンね。っていう前提は、健全な人付き合いのなかでは必須なのだと思うのです。

ああ私の物事の考え方や感じ方は松尾さんの物事の考え方や感じ方に似ているのだなと思ったのでした。

本当にさくっと読めるしお手軽なお値段なので、興味を持った人はぜひ。
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黒い家
09月 14日 * 12:46 * 貴志 祐介 *
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だいぶ前に映画を観た気がしていたのだけれど、かなり新鮮なきもちで最初から最後まで読んでしまいました。
こわい。すごくこわい。
この怖い女の人を映画では大竹しのぶが演じたのですねえ。すばらしいキャストである。

人間だろうがそうでなかろうが、人としてのルールが通用しない相手って怖い。
私達が人間を殺す事を躊躇する理由っていうのは、そういうルールの世界で生まれて育っているからにほかならない気がします。

いやあ、怖かった。
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心霊探偵八雲1〜8 & Another EP
09月 05日 * 03:04 * 神永 学 *
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心霊探偵八雲は、現在10冊くらい出てる(気がする)心霊ミステリーもののシリーズです。

そのうち文庫化されている9冊をこの3日くらいで一気に読了。
読みやすいしスピード感はあるしで大変楽しい時間を過ごしました。

キャラの描写などは若干しつこい感じもありましたが、9冊分の時間をかけてもくっつかない主人公とヒロイン。
亀の歩みどころの騒ぎじゃないです。面白いけれど。

赤い目、異形の目を持っているが故に心に傷を負ってしまって…しかしその異形の目のおかげで死んだ人の魂が見えてお話もできる「心霊探偵」八雲君がバシバシ事件を解決していく…というお話です。

物語の進行は常に二軸。
あっちの話とこっちの話がバラバラっと進んでいって、クライマックスで一つにまとまる。
ジェットコースターに乗っているような感覚でございました。

1作ごとに完結するお話ではあるのですが、シリーズを通じて描いている大きなテーマがあってそれもなかなか興味深く。
ただまあ、なんでもかんでも長野…だとか、出てくる人が都合よくパタパタとつながる、だとか、引っかかるところはあるっちゃあるのですが。そういう事を突っ込む作品ではないので問題なし。
そういうところが気になる人にはオススメ出来ません。

八雲君のキャラがとても魅力的。
周囲の人物もかなり魅力的に描けています。
やっぱり物語はキャラクターが立っていないと面白くないのでして、全てはそれにかかっているとも言えなくない。
若干しつこいところもありますけれどもね。

なんかこー、ハリウッド映画を観る気分に近い感じで楽しめる小説でございました。

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オリンピックの身代金
08月 27日 * 22:36 * 奥田 英朗 *
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奥田英朗の小説は、地味にやられる。
描いてあることのリアルさにやられる。

というわけで、あまり元気のないときには読めない小説です。

舞台はタイトルのとおり、東京オリンピックに向けて日本中が大騒ぎしていた昭和39年。
戦争やら学生運動やら、そういうものがまだまだ記憶に新しい時代の日本。
オリンピックにそんなにアツい思いを向ける気持ちが私などにはまったくわからないのですが、
この小説を読むと、当時の人たちのオリンピックにかける思いがよくわかる。

焼け野原だった東京が、こんなにも立派になったんだ……。
と、世界に向けて精一杯声を張り上げたかったんだろうなあ。と。

開会式に爆弾を仕掛ける。やめさせたいなら金をよこせ。

お話としては、そのまま、オリンピックを人質に身代金を要求するというお話。
オリンピックは東京の豊かさの象徴として登場します。
高度成長期に浮かれて前向きな(東京の)人たちの豊かさの象徴。未来の象徴。
日本の未来は明るいぞ、という気持ちの象徴。
しかし、実際にオリンピックの会場を作っているのは東北から出稼ぎに来ている人夫だったりするのです。
中間業者がよくわからないくらいに入り混じり、孫受けの孫請けみたいな状態で働いている出稼ぎ人夫たち。
彼らの生まれも育ちも、それから田舎においてきている家族や親族の暮らしも豊かとは程遠い。
生まれながらにして希望も夢も何もない。
そこの部分の格差が非常によく描かれています。

もう、息苦しい。すごく息苦しい。

優しさと真面目な性格でもって、ちょっととんでもないことをしでかしてしまった東大生。
その行動のもとにある気持ちや思いはすごく理解できる。
しかし一方で、そのせいで自分の様々なものを投げ打って、命をかけて国のために、ひいては自分たちのために必死になった人たちもいる。
警察官だって、地道にお給料をやりくりして小さな幸せを守る人たちなのである。
とても恵まれた環境で、何不自由なく育った人たちだって、自らの幸せのために一生懸命なのである。
境遇にこそ差はあれ、自分の幸せを守る意味において、誰もみんな同じである。

ただ、生まれる場所や境遇によって、人生が天と地ほど変わってしまう不条理だけが物語の真ん中に鎮座していて、その存在感だけが非常に私を圧倒して、疲れさせたのでした。

今はこの小説の時代ほどわかりやすい不平等さは見えないけれど、見えないだけで確実に今だってあるものだと私は思います。しかしそれに嘆いていてもどうしようもないわけで。
そして私は、東京生まれの東京育ちなのだよなあ。。。と、なんとなくやりきれない思いを持て余してしまいました。しかしできる事はなにもないのだ。自分の生活でいっぱいいっぱいなのは、程度の差こそあれ変わらないのだ。
……まあ、今の私の暮らしは、おそらく底辺に近いところにあると思うのですけれどね。

面白いし良い小説です。

元気な時に読むことをお勧めしたいです。


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