本の記録
読書感想文。
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ポーの話
10月 27日 * 08:32 * いしいしんじ *
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ポーの話 (新潮文庫 い 76-8)
ポーの話 (新潮文庫 い 76-8)
いしい しんじ

うなぎ女から産まれた男の子。ポー。
うなぎ女たちの絶大なる母性愛によってはぐくまれ、巣立ち、成長して裏返り、生まれたところに戻ってくるお話。

かなり長い小説なのだけれど、そして小説の重たさ軽さは小説の長さには比例しないけれど、ずっしりと来る大作でした。

人外の存在であるうなぎ女、ものっすごい女ったらしでしかも泥棒なメリーゴーランド、その妹の成長しない女、ひまし油。

ポーは、もう何人いるかわからないくらい沢山いるうなぎ女全体の息子として育てられるのだけれど、まずその母性愛に感動。
本能むき出しにしてそのおもむくがままに生きている感じは、そのまま生命力の強さとして心に入ってくる。

その強さを受け継いで、巣立った後に出会う様々な人から、人として生きる事の大事な事を感じて学んでいく。

ちょっとおつむの足りない存在としてえがかれる「天気売り」が、巣立ったあとのポーを正しいほうへ導いて行く存在になっているのも印象的。

人として生きて行く限り、罪はつくり続けるもの。
だから人はつぐない続けていくもの。
空をまっすぐ見つめられないような生き方をすることが、つぐないを怠って生きること。

ラストあたりの展開はなんともかなしい。
もはやひとではなくなってしまったポーは本当に沢山の人を救うのだけれど、人である私からみるとそれってすごく寂しいことだったりする。

様々に形を変えて、裏返るまえに出会った人達のところを一周して、ポーはウナギ女のところに帰る。
それは転生を意味していたり、最後にそもそもウナギ女からうまれたポーはどこからやってきたのかとか、そういうことがわかったりする。


あまりに過酷な宿命を持って、うまれ続けるポー。
ポーの純粋無垢さを通じて、人のおろかさもいとしさも浮き彫りになる、総じて生きてるって本当に素晴らしい。っていうお話でした。


お話の中に出てくる擬音語が大変美しい。いしいしんじの小説、今まで読んできたものも擬音語とか言葉の使い方の美しさはあったんだけれど、この物語に出てくる擬音は本当に、本当に美しかったなあ。

スフスフ、スフスフ。

お気に入りです。
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ぶらんこ乗り
08月 26日 * 08:15 * いしいしんじ *
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ぶらんこ乗り (新潮文庫)
ぶらんこ乗り (新潮文庫)
いしい しんじ

空中ブランコ乗りの夫婦のエピソードがとてもとても印象的でした。
何度も何度も出てくるのだけれどね。

すごくあたまのいい弟のことを、姉が思い出して書いているというお話。
すごい小説でした。短いしさくっと読めるんだけれど。
すごくあたまがいいってことは、大多数の人からちょっと外れてるって事でさ、その外れたこっち側と向こう側に弟とわたしがいる。

こっち側にいる私は弟のことが理解できなくなることが沢山あって、それでも大事な自慢の弟なんですね。

ブランコに乗って、あっち側とこっち側をぶらぶらゆれる。
あっちがわに引っ張られそうになるけど、大丈夫。後ろでおねえちゃんが見ててくれるっていう信頼感。


姉妹だけでなく、家族もとても魅力的。
子供の前でも堂々と愛し合ってるお父さんとお母さん。
怖いけれどとてもやさしくて、クセのあるおばあちゃん。
あとは犬。指の音。


こういう風に人と繋がれたらいい、と思うし、そういう風に人と繋がれるようになろうと思ったりする。

空中ブランコ乗りの夫婦は、1日中ブランコの上で暮らしているから触れようと思ったらブランコを揺らすしかない。
揺らしてそのブランコが交差した一点でだけ、手をつないでいられる。
ずーっと触れ合い続けられないのは寂しいけれど、それでもその一点のためにいつまでもブランコはゆれてる。

空中ブランコ乗りじゃなくても、私たちもきっとこういう風にしか誰かとかかわれない。それは寂しく感じるかもしれないけれど、本当はすごくすごく素敵なことなのじゃないかなと感じました。
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