本の記録
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モダンタイムス
11月 03日 * 09:52 * 伊坂 幸太郎 *
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モダンタイムスは、魔王の続編です。
読み終わってAmazonのカスタマーレビューを観てから気づいたのは内緒です。
慌てて魔王を読み返したのも内緒です。

確かにがっつり続編でした。というか世代交代な話。


世の中はわかりづらい。
現実はいつだって混沌としていて、世界も社会もなんだかよくわからないまま、
思いもかけない方向へ転がっていく。
世の中が良くなっていて欲しいとは、きっと誰もが思っていることなのだけれど
時間は流れるし世の中も変わる。
ここがいい、というところで止まってはいられない仕組みになってる。
世の中がよくなって欲しいと願うのはなぜなのか。
それは、自分自身の置かれている環境がよくなって欲しいから。

今の世の中の諦観を、魔王はよく現していたと思う。
そしてモダンタイムスでは、悪者なんていないことを語っている。

アメコミのように、スーパー戦隊ヒーローのように、わかりやすく悪者がいれば、
世の中はとってもカンタンでわかりやすいんだと思う。
悪者もいない、ヒーローもいない。
この世の中は、誰の意図でもなく、みんながみんなの役割を持って動いている。
誰もその全体図を知らない。

だから、悪者はいない。
強いて言えば、悪者は人間自体そのものっていうことになる。

選挙に行かない。
自分ひとりが世の中を変えようと思っても、なかなかどうして変わらない。
どうせこいつが当選するんだろうという諦めのもと、
選挙に行って、やっぱり「どうせこいつ」が当選してしまう時のがっかり感。無力感。

私たちは、投票することでしか世の中の大きな仕組みに参加できないという、
どうにもこうにもな感じにはまりこんでいる気がする。

そんな大きな大きな事をぼんやりと、しかしきっちりと描きながら、
結局一番大事なのは自分の手の届く範囲の物事だよね。っていう結論と、
どうにかこうにか一矢くらいは報いれないかとその仕組みのなかで頑張る結論と。

それはどちらがよいというものでなく、
結局、それぞれ自分自身が考えた「自分にとってよい」事なのだと思う。

「勇気はあるか」

という言葉が作中に何度も何度も出てくるのだけれど、
見て見ぬフリをするのも、目を逸らさないのも勇気っていうのは必要らしい。
だとすれば、勇気っていうのは「自分はこうする」って方向性を決めるってことなのかな。

それは覚悟に似てるのかもしれない。
そういえば、さらっと読み返した「魔王」には「覚悟」っていう言葉がちょこちょこと出てきてた気がする。
(なにぶん斜め読みなので確信はない)
自分の行動には自分で責任を取る事。ってことなのだと思う。
それは、大人の条件だと私は思っている。

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